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「おい……デュオ」
「んあー……?」 デュオは白い肌をうっすら上気させて、気怠げにヒイロを見つめた。ヒイロはため息を落としてデュオの手からグラスを取り上げる。 「いい加減にしろ。飲み過ぎだ」 いくら、エージェントの訓練の一環として薬物投与されていたことがあり、薬もアルコールも効きにくい身体になっているとはいえ、限度がある。もっとも、ヒイロとデュオの耐性についてはほぼ同じくらいなのだが、デュオが無茶な飲み方をするものだから、慎重な飲み方を心掛けているヒイロが潰れてしまったデュオを介抱する……というのはすでにパターン化されていた。 「まら酔っれらいもん……」(まだ酔ってないもん) ろれつが回らなくなっているデュオに、充分酔ってるだろうが……と内心呟きながら、ヒイロはソファにぐったりもたれかかっているデュオを見やった。 「ほら……、こんなところで寝ると風邪を引く。ベッドに行くぞ」 なんのかんの言っても、つい世話を焼いてしまうヒイロが、デュオは大好きだ。脇から手を入れられ、ゆっくり立たされたが、デュオはひざが笑いまくってて、ついヒイロに抱きついてしまった。……というより、倒れ込んだと言ったほうがより近い。 「っ……!」 すんでのところで一緒に倒れる事態を回避したヒイロは、なんとか踏み止まった姿勢でデュオを抱き止めた。 「デュオ……」 明日は間違いなく二日酔いだな……と確信しながら、ヒイロはデュオを歩かせるのを諦め、ソファにもう一度腰掛けさせてから両腕で抱き上げた。 正気の時なら恥ずかしがって、決しておとなしくしていないのだが、酒が入ると羞恥心が飛ぶのか、デュオはらくちんだと言ってはしゃぐ。楽しそうにじゃれてくる腕の中のデュオの姿に、ヒイロは視線がやわらかくなる。 「わーい、ヒイロにらっこしれもらっにゃっらー」(ヒイロにだっこしてもらっちゃった) ……ヒイロにはかろうじて意味が分かるが、デュオの声はすでに暗号化している。 「ほら、おとなしくして」 ベッドにデュオを下ろし、ヒイロはふとんをつかんでデュオに掛けようとし……ふいに袖を引っ張られる感覚に振り向いた。 ヒイロの目がまたたく。 「……ヒイロ……」 潤んだ瞳でデュオがヒイロを見上げている。半開きになった薄いくちびるの奥に、白い歯と真っ赤な舌先がのぞいている。 「ん……」 くん、と引っ張られるまま、ついヒイロは身体をかがめデュオのくちづけを受けていた。 「っ!」 一瞬触れたデュオのくちびるのやわらかさに、ヒイロははっとした。 「デュオっ」 恥ずかしさが先に立って、ヒイロは顔が熱くなった。けれど、デュオはぼんやりした表情でヒイロを相変わらずうっとりと見上げている。 「ヒイロ……」 デュオの声が、いつもより数割増し甘く耳に響く。鼻にかかったような声音は酒の飲み過ぎのせいだと分かっていても、抗いがたい誘惑になってヒイロを苛む。 そんな……懸命に自分の中の激情を抑えようとしているヒイロの理性など知らぬように、デュオは切なげに瞳を震わせた。 「ヒイロ、俺……嫌い……?」 「な、なにを言って……」 うろたえるヒイロに、デュオがしがみついた。 「ヒイロ、好き……」 ああもう。 これ以上どうしろというのだ。 ヒイロはなけなしの理性をごみ箱に放り込み、デュオをベッドの上に押し倒した。 「あー、頭いてえ」 翌朝、デュオはベッドの中で呻いていた。実を言うと頭だけでなく、腰のあたりを中心に、身体じゅうがだるい。身体に残る感覚からすると、どうやらヒイロと抱き合ったらしいことは察しがつくのだが、なにをどうしたらここまで疲れきることができるのか、デュオには分からない。ヒイロはというと、なぜか朝から機嫌が良くて、今にも鼻歌のひとつくらい歌い出しそうな程楽しげに、朝食を作っている。 「なあ、昨日さ、酒飲んでる途中から記憶がないんだけどさー、昨夜何があったわけ?」 「覚えてないのか?」 「……たぶん……やったんだろうけどさ……なんでこんなに俺、疲れてるわけ?」 ヒイロは振り向いた。ため息をつきそうな様子で、デュオを見つめている。 「おまえが俺にしがみついて何度もねだったからだろうが」 「お、……俺、が!?」 デュオはヒイロの言葉を聞いた途端、艶かしい昨夜のいろいろなことをちょっとずつ思い出し始めて真っ赤になった。 「あ、あ……う……。……恥ずかしくて死にそう……」 ベッドの中でへこんでいるデュオを見やり、ヒイロは呟いた。 「俺は……楽しかったがな」 「……ヒイロ……?」 「たまには、いいんじゃないか?」 「……そっかな……?」 「ああ」 デュオは真っ赤になったままの頬を押さえながらヒイロを見つめた。 |
あはは(汗)。えっちシーン、逃げちゃいました。ごめんなさい。ところで……これ、誘い受けになってますか? どきどき。 |
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