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これはNovelのページにある「街角にて」の続きです。未読の方は、よかったら先にそちらをお読みくださいませ。 |
ヒイロとの初めてのデート。 ……と改めて考えると緊張してしまう。ヒイロと待ち合わせをしていた時はわくわくしていたはずなのに、並んで歩き始めると、どきどきが胸の中でふくらんできて、鼓動が隣を歩くヒイロにまで聞こえてしまいそうな気がしてきた。 「デュオ」 「なっ……なに?」 「ランチが終わったら、映画を見ないか?」 チケットをもらったんだ、と見せられ、デュオはそれが見たかった映画だと分かって、何度も頷いた。 「でも、いいの? 俺とで」 「いいんだ。おまえが見たかった映画なら、俺と趣味も合うみたいだし」 つまりはヒイロも見たかった映画なのだろう。見終わったら、話もできるし、いいかな、と思った。 映画を見るより、ヒイロを見ていたいと一瞬思ったけど、デュオはすぐにその考えを改めた。なぜなら……ただそばにいるだけで、こんなに動悸が激しくなるのに、ずっと長い間見つめていたりしたら……心臓がどうにかなってしまいそうだったからだった。 「どうだ?」 「うん、すっげ美味しい」 まず、お昼にしようと言って、デュオはヒイロと並んで近くのレストランに入った。映画のチケットはあるし、映画が終わる頃は夕方だから、先に食べておいた方がいいに決まっているし。 ……だが、実際テーブルを挟んでヒイロを向かい合わせに座ると、デュオは予想以上に緊張した。 何にする? と聞かれて、うろたえながらメニューを見つめて選び、息をついて窓の外を見つめたりした。 外には何も見たいものなんてなかったけど……ヒイロの顔を真っ直ぐ見続けられる勇気がなくて、デュオはどうしても目を逸らしてしまっていた。 ヒイロもあまり話す方ではないらしく、テーブルは静まりかえっていたけど、店内にはクラシック曲が流れていたから、そんなに静かではないはずだった。デュオが音楽に気づいたのは食事を始めてからだったが。 「美味しい……」 「そうか。よかった」 そう呟いたのに気づき、デュオがヒイロを見ると、ヒイロはうれしそうに微笑していた。 デュオは顔が火照るのを感じ、あわてて俯いた。 もっとヒイロのことが知りたいんだ、とか言いたかったけど、とてもデュオには聞けなかった。 口を開けば、好きだ好きなんだ、ヒイロのことが大好きで、ずっとずっとそばにいたいんだと言いたくてたまらなくなる。なのに、どうしても口が開かない。思うように言葉が出てこない。どうしてなのか……自分でも苛立つ程、デュオは身体がかちこちになっていた。 楽しくない訳じゃ、決してないのに……。 うれしくて舞い上がりそうでどきどきして、でも、とても今緊張していて……デュオは幸せに浸る余裕などなかった。 「デュオ、どうした?」 「え?」 カトルと楽しげにおしゃべりしている様子を知っているヒイロには、デュオに物静かという印象はない。放っておけばいつまでも話し続けるラジオのように、明るくて騒がしい奴なのだと思っている節があった。 「元気がないな」 「そんなこと、ねえよ」 ただ、緊張してるだけで。……でもそうヒイロには言えなかった。言おうとしてためらっているうちに、ヒイロは小さくため息をついたから。 「俺といて楽しくないか」 「な……っ。楽しいよ。楽しくないわけ、ないじゃんか」 「でも、おとなしいじゃないか……その割には」 「それは……き……緊張……してるから、で」 「緊張?」 ヒイロは瞬いてデュオを見つめ、噴きだした。 「な」 「緊張? おまえが?」 くすくす笑っていたヒイロが、笑い死にそうなくらい、懸命に笑いを堪え出すのを見て、デュオは頬をふくらませた。 「俺だって緊張するんだよ!」 「じゃあ……なぜ?」 「だって、……ヒイロと……デート……だし」 デュオは顔を赤らめて、目を逸らした。 「デュオ」 「すんごく……勇気がいったんだから、な。俺もヒイロも男だし……友だちって言うには、まだ時間が足りなさすぎるし、……でも……俺はヒイロが好きで好きで……あ」 「俺が?」 「っ……」 デュオは赤くなった。ヒイロは手を伸ばして、デュオの頬にそっと触れた。 「俺も、デュオ……おまえのことが好きだ」 「え」 「じゃなかったら、会ってまだ3日しか経ってないっていうのに、デートなんてするわけないだろう」 それはそうかもしれないけど……。デュオはヒイロにそんな風に言われて、また頬が熱くなった。 「おまえをずっと見ていられたらいいんだけどな」 そうも言ってられないしな、とヒイロが苦笑気味に呟く。 「なんで?」 「もうすぐ食事も終わるし、そうしたら映画館に行かないと」 「……行かなくたって」 「なら、チケットが無駄になるな」 「あ……」 一瞬、惜しそうな顔をしてしまったデュオに、ヒイロはおかしげに笑った。 「おまえ……正直だな」 「え? なに……」 「すぐ顔に出る」 「えっ……」 ヒイロはまだ笑っていたが、目は優しい光を帯びていて、デュオをじっと見つめていた。 「本当に目が離せない」 くるくる動き回る子犬のように、少しもじっとしてなくて、危なっかしいのと、愛らしいのが同居している。気がついたらこんなにも惹かれてしまっていた。 「ヒイロ」 デュオは頬を染め、ヒイロを見つめた。 「俺のこと……ずっと見ててくれる?」 「ああ。おまえがいやでないなら」 「いやなんかじゃ、ないよ」 「そうか……」 ヒイロはデュオを抱き締めようとして、テーブルが邪魔なのに気づき、デュオの右手をそっと持ち上げると、甲にくちづけた。 「ヒイロっ」 「愛している」 デュオは顔が真っ赤になった。 「っあ……」 「できる限りそばにいるよ」 「ヒイロ……」 恥ずかしげに名を呼ぶデュオに、ヒイロは苦笑した。 「そういう時は、OKかどうかを答えるものだろう」 「あ」 デュオは恥ずかしそうに瞳を揺らめかせ、ヒイロを見つめた。 「うん……」 それだけでは不充分だというのは、ヒイロが期待した視線で変わらず見つめてきているのに気づいてからだった。 「……うん、そばに……いて」 「ああ」 デュオはそっと離れていきそうになったヒイロの手をこちらからつかんだ。 「俺も……ヒイロが嫌でなければ、ずっとだってそばにいるから」 「分かった」 ヒイロは微笑し、立ち上がると、もどかしげにデュオの側にやってきてデュオをきつく抱き締めた。 |
いかがでしたでしょうか? 書きたいところまで全然書けませんでした……。本当はヒイロの部屋かホテルに、お酒とかでぐったり酔ってしまったデュオを連れ込んで(いえ、別にやましい気持ちがあったわけでは(苦笑))……というところまで書きたかったのに〜。……ああ……本にしたいな〜……するかもしれない(^^)。 よかったら感想お聞かせくださいね〜。ではではまたっ。 |
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